小さいころ、絵本に出てくる食べ物をなんとかして食べてみたいと思ったことはないだろうか。
自分のもっとも古い記憶は「ぐりとぐらのパンケーキ」だ。
フライパンから大きく盛り上がった黄色いかたまりは見ているだけで幸福な気分になる。
非日常への憧れや登場人物への共感といったスパイスによって、物語に登場する食べ物はひとかたらならぬ魅力を放つものだ。
そしてその魅力は、大人になった我々の心をも強くとらえて離さない。
そんなテンションぶち上がりのメニューが多数提供される夢の空間が、コラボカフェである。
限定グッズの物販戦争やランダムグッズの推しを求めてドリンク&フードファイトが繰り広げられる戦場としての側面も否めないが、今回はそのあたりへの言及は最低限にとどめて「スーパー戦隊レストラン」の思い出をつづりたいりと思う。
スーパー戦隊レストランはカラオケチェーンであるパセラ池袋西口店の4階にある。
歴代スーパー戦隊にちなんだメニューを楽しめるセルフサービス型のレストランだ。
壁際のショーケースにはベルトや変身アイテム、フィギュアなどが所狭しと並べられ、ちょっとした博物館のような様相を呈している。
また同じフロアには歴代仮面ライダーにちなんだメニューを楽しめる仮面ライダーTHEダイナーもあるため、どちらかに入店すれば戦隊とライダーどちらのメニューも楽しむことができる。
ドンブラにハマるまでにも何度か足を運んだことがあったのだが、今回は本気度がちがう。
先週の記事に引き続き、とにかくドンブラに対して「何かしている」状態でいたかったのだ。
私は二次創作するオタクだが、ドンブラに対してはそういう方面での食指が動かなかったため、創作というアプローチができなかったことも焦燥に拍車をかけていたように思う。
毎週放送を見て、感想をツイートして、フォロワーと盛り上がっているだけでも十分だろうが、ドンブラにはそれだけで納得できない何かがあった。
人生をめちゃくちゃにされたかったのかもしれない。
人生をめちゃくちゃにされるチャンスは、2023年4月までに全部で4回あった。
- おさらい その1(2022.6.7〜7/20)
- 映画 新・初恋ヒーローメニュー登場(2022.7/22〜)
- おさらい その2(2022.9.20〜10.23)
- おさらい その3 FINAL(2023.2.26〜4.2)
他の予定で忙殺されていたおさらい第三弾以外は足を運ぶことができた。*1
根性でスケジュールをひねり出したときもあったし、たまたま平日に池袋方面に用事があったときもあった。
ストレスフルな予定のあとに、自分を元気づけるために行ったときもあった。
スーパー戦隊レストランがただそこにあるだけで、人生がちょっとだけドンブラに染まるのは嬉しかった。
一人で行くことが多かったが、どうしてもドリンク&フードファイトモードになってしまい、会計のときに己のさもしさを感じてしまう。
やっぱり、おさらいその1に友達と行った時が一番楽しかった。
原作のエッセンスがどのようにメニューに落とし込まれているかをあーでもないこーでもないと語り合う相手がいてくれるのはありがたいものだ。
印象深いメニューは数あるが、中でもサルブラザーこと猿原真一のメニューはシンプルながら静かに異彩を放っていた。
まず、おさらいその1「空想の酒」
空想の酒というからにはアルコールではないことは想像にたやすい。
しかしこの升に注がれた液体が何なのか、メニューには一切書かれていないのだ。
そこも含めて「空想」しろ、ということなのかもしれない。
友達が頼んだメニューなので、私自身は口にしていないのだが彼女曰く
「スポドリだった」
スポーツドリンクとおでん、部活帰りの高校生がコンビニで買い食いするラインナップ。
この頃はジロウとムラサメが登場したあたりで決闘にも至っていなかったので、おでんが作中屈指のキーアイテムになるとは思っていなかったが、その後のタロウ・ソノイ・猿原の関係性を考えるとなかなか示唆に富んでいる。
公式、そこまで織り込み済みだったのだろうか…
先述の通り行けなかったおさらいその2のサルブラザーのメニューは、空想のラーメンだったので謎の飲み物はついていないことを確認している。
様々な思い出を胸に万感の思いで迎えたおさらいその3FINALでも、やはり猿原のメニューに飲み物が添えられていた。
メニュー一覧には「もう春か」とある。
具体的な食べ物の名前さえなくなった上に、説明文に正体は書かれていない。
猿原最後の登場シーンで彼が放り投げたトレードマークの「ねじねじ(ストール)」に見立てたねじりドーナツと、湯飲み。
これはもう、絶対に湯飲みの中身を知りたい。
メニューの写真ではわからなかったが、白濁している。*2しかもホットだ。
ドーナツに合う、ホットで白濁した飲み物って何?知らん……
甘酒にしてはサラサラしている気がするし、独特のにおいもない。
とりあえず覚悟を決めて飲んでみると、なんかホッとする味がする。甘い。
でもわからん。
今日は一人で来てるから、友達に助言を乞うこともできない。
いや、友達がいなければ店員さんに聞けばいいんじゃない?
店内もそんなに混んでいないタイミングだったので、食べ終わった獣人のしょうが焼き(これめちゃくちゃおいしかったです)の皿を下げに来てくれた店員さんに聞いてみた。
「ほうじ茶シロップとミルクです」
ほうじ茶シロップって初めて聞いた。ホッとする風味の正体はほうじ茶だったのだ。
シロップだからほうじ茶独特の茶色はないし、ミルクで割れば白濁してさらっとした飲み物になるのね、なるほどなるほど。
しかしそれを甘いドーナツに添える意味&猿原真一との関係性は……?
解決する疑問があった一方で別の謎が深まってしまったが、こういう宿題があるおかげで毎週の放送が終了してしまった今も私はまだドンブラのことを考え続けている。
きれいに解決してくれないおかげで、ドンブラに対して「何かしている」状態でいられるのはうれしい。
引き続き、私の人生をめちゃくちゃにしてほしいと願うばかりだ。